「ものづくり」をもっと身近に
長く愛され続けるために
必要なイメージ戦略について語る
セイカ食品には『ボンタンアメ』以外にも数々の人気商品があります。
なかでも、アイスクリーム『元祖鹿児島 南国白くま』は、
地元・鹿児島らしさを生かした広報戦略で、幅広い世代に親しまれています。
世代を超えて愛され、身近に感じてもらうものづくりへの思いは大島紬も同じです。
そのために必要なイメージ戦略について、
情報誌『つむぎ折折』で掲載しきれなかった内容を紹介します。
鹿児島から全国区の人気者に。種類も豊富な『南国白くま』へ。
ー『南国白くま』は鹿児島を代表するスイーツとして人気ですね。
玉川さん 『南国白くま』は練乳やフルーツ入りの“氷白熊(かき氷)”のこと。知らない人は「鹿児島の人ってホッキョクグマを食べるの?」という笑い話があったそうです。
由来は諸説ありますが、昭和7(1932)年ごろ、鹿児島の綿屋さんが夏の副業としてかき氷屋を営んでいた際、練乳と果物をトッピングした高級かき氷を売り出したとか。練乳の缶に白熊印があったことから、“氷白熊”と呼ばれるようになったそうです。
ー最近は全国にたくさんのファンがいると伺いました。
玉川さん 当社では家庭で気軽に食べていただけるように、昭和44(1969)年ごろから工場で生産を始めました。最近は全国のコンビニでも手軽に買えるようになりました。
ーSNS映えを意識した商品もあるそうですね。大島紬でもぜひ参考にしたいです。
玉川さん 果物を華やかに盛り付けたカップタイプ、果物の断面が美しいバータイプ、小粒のパインが入ったソフトなど、味はもちろん、見た目、食感、素材の贅沢さにもこだわっています。
『南国白くま』を軸にいろいろな商品が展開ができています。
鹿児島らしさを盛り込んだ広報戦略。ぶれずにやり続けることで浸透する。
ー商品のキャラクター『南国白くま君』はとてもユニークですね。
玉川さん 南国白くま君は長く親しんでもらえるように、ちょっとドジでどこか憎めないキャラクターに設定しています。
約20年前の誕生以来、コンセプトは変わっていません。
ー大島紬は1,300年以上前から受け継がれてきた変わらぬ伝統技法があります。情報誌の「伝統には変えていいものと、変えてはいけないものがある」という言葉が印象に残っています。ぶれないコンセプトと、鹿児島の風景や方言などを取り入れたCMは、商品と風土を身近に感じます。
玉川さん 鹿児島の魅力に自社商品をマッチングすることで、懐かしさや温かさ、世代を超えて長く愛されるイメージを育めたらと思っています。CMは桜島や鹿児島の古流剣術「示現流」などを盛り込んだ『南国白くま体操』、丸ごと鹿児島弁の『方言すぎるおとぎ話シリーズ』などがあり、ホームページやYouTubeでもご覧いただけます。
五感に訴えることで、魅力を体感してもらう。
ー情報発信の大切さを改めて痛感しています。
玉川さん コロナ以前は工場見学が可能でしたが、今、ホームページで日置市のアイスクリーム工場を、パノラマVRでご覧いただけます。一番の広報は実際に製造過程を見ていただき、食べていただくことだと思います。大島紬も実際に見て、触れて、着ていただける機会が増えるといいですね。
ー広報戦略の大切なヒントをいただきました。
玉川さん 軸足をぶらさず、時代や環境に合わせて進化させていくためには、他流試合を恐れず、学び続けることが大切です。自分が知らない世界で得た新しい気づきは、進化のためのヒントにもなります。今回、私も大島紬に触れる機会をいただき、ありがとうございました。
インタビューを終えて…
大島紬と伝統については、我々の先人たちも含め、これまでずっと考え続けてきたテーマです。
インタビューの際に、「伝統=変わらないものではない。伝統は変化するものではなく進化するものである。軸足をぶらさずに時代に応じて進化させることを意識している」という、私たちがあまり意識しない視点からの言葉にハッとしました。
これは「ものづくり」などに通底する考え方です。大島紬にとって「軸足」とは何なのか、「進化」とは何なのかを、これからも考え続けなければならないと思います。
貴重なご意見をありがとうございました。
本場大島紬織物協同組合
Profile
玉川 浩一郎
Koichiro Tamagawa
(セイカ食品株式会社 代表取締役)
1965年8月、鹿児島県生まれ。1989年3月 大阪大学基礎工学部合成化学科を卒業、同年4月 伊藤忠商事株式会社へ入社。1993年 同社ソウル支店に勤務。
1995年4月 同社を退職。同年5月 セイカ食品株式会社へ入社。2007年6月から現職。
2003年1~12月まで 社団法人鹿児島青年会議所 理事長を務めたほか、2018年5月から九州菓子卸商業組合理事長、2021年5月から財団法人鹿児島陸上競技協会会長も務める。
https://www.seikafoods.jp